民業圧迫?

 電電公社(NTT)民営化のおかげで、特に官公庁の情報システムがNTTグループにどんどん奪われているという事実を、皆さんご存じですか?

 少々古い資料ですが、こちらをご覧ください(→資料「情報システムに係る政府調達の見直しについて」)。
 38ページの表9「政府機関及び関連機関の情報システム受注シェア」というのを見ると、平成9年には金額ベースで1.3%しかなかったNTTグループによる受注が、平成12年には44.1%まで跳ね上がっています。

 元々NTTグループは、旧電電公社時代から官公庁の情報システムは受注していました。例えば、郵便貯金の基幹システムは電電公社が請け負っていました。が、それはあくまで「民間業者では技術力が要求に満たないため、補完的に電電公社に発注を行う」という位置づけで、民間業者を圧迫するような性質のものではありませんでした。

 電電公社が民営化されてNTTグループになると、この情報システム部門は「NTTデータ」という子会社に引き継がれました。NTTデータは営利の株式会社ですから、当然利益を上げるために受注を伸ばさなければなりません。
 しかし情報システム業に必須の「業務ノウハウ」が、NTTデータには官公庁のものしかありません。なのでNTTデータは、官公庁システムの受注確保に全力を挙げるようになったのです。

 その一方、NTT本体は通信業における独占排除を目的に、さらに東西2社と国際・長距離部門の計3社に分割されました。通信業界の激しい競争の中で、分割された会社が利益を確保していくのもこれまた難しい話です。
 そこでこれらの会社は、通信以外の収益源を模索し始め、当時伸び盛りだった情報システムに触手を伸ばし始めます。普通なら、こういう新参の会社が特に官公庁から受注を勝ち取るのは難しい話です。が、此らの会社には「NTT」という強力なブランド力がついています。NTTグループ各社は、順当に官公庁からの受注を勝ち取っていくことができたのでした。

 そして、ITブームが過ぎ市場が落ち着いた現在も、NTTグループによる官公庁システムの受注シェアは依然強大です。「民間業者」のシェアはNTTグループによって奪われたままなのです。


 郵政民営化において、賛成派が挙げる理由に、「官業による民業の圧迫を排除する」というものがあります。
 しかし、上記の例でわかるように、民営化が必ずしも「民業」の圧迫を排除するわけではなく、むしろ却って「民業」の圧迫に繋がってしまうこともあるのです。

 郵政民営化に賛成の人も反対の人も、この事実だけはきちんと頭に入れておいた方が良いのではないでしょうか。



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    Excerpt: 新生銀行と日債銀の処理をみると、郵政民営化された時に何が起きるのか推定することが出来る。郵便会社と新生銀行&日債銀は違う、郵政民営化で350兆円が奪われるなどというのは単なる妄想と切り捨てることも出来.. Weblog: 1喝たぬき racked: 2005-08-20 13:44